パブリックスクール(寄宿学校)と虐待と。

今年に入ってからガーディアンが、何本かイギリスの歴史的な制度とも言える、名門寄宿学校を批判する記事を連続して出している。

 

寄宿学校はなぜリーダー養成に向いていないのか、であるとか、寄宿学校がいかにして子供の人間性を根本的に傷つけるか、といったような記事で私はこれによって初めてBoarding School Survivorsという表現があることを知った。DVやレイプや児童虐待と同様、その学校を経験したことが「Survival」であった、という含みで、これはかなり強い表現だと思う。

性的虐待の被害にあった子供、いじめから逃げる場所のない苦痛、そして純粋にあまりにも低い年齢で家族から離れるため、愛情をうまく育むことができなくなったケース。寄宿学校のせいで人生がめちゃくちゃになった、と感じている人も多く、互助のチャリティーがあるということも初めて知った。The Boarding School Survivors.

 

性的被害にあったケースでは「上流階級の発音のホームレス」となった男性の例が紹介されていて、「今は結婚しているけれど、妻と性的に触れ合いたくない」と、親密な愛情表現ができないことの苦しさを語っている。こうした極端な例ではなくても「何もせずにリラックスすることができない」「人との間に壁を作る」といった日常生活には適応しているけれど親密な家庭生活を送るのに支障を来しているケースもあるらしい。

 

知り合いにも寄宿学校卒がそれなりの人数いる訳で、こうした人間関係の困難がパブリックスクールの卒業者全員に当てはまる訳ではないとわかっていながら、確かに何歯車が合わなくなった時に、子供にとっては恐ろしい環境になりうるのだな、ということは容易に想像がつく。

 

現在声を上げている人たちはすでに50代を超えていて、現在の子供達の声は必ずしも聞こえてきていないけれど、今後、おそらくこうした話は発掘されるのだろうな、と思う。日本に置けるパブリックスクールの理解も、おそらくは変わって行くのだろうと。