Sally Heathcote: Suffragette 婦人参政権運動に参加した女性たち

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          Picture from Mary Talbot's website.

 

漫画を勧められた。Sally Heathcote: Suffragetteという作品で文字通りサリーという名前のワーキングクラスの女性が婦人参政権運動に関わって行くその人生を描いた作品。実に3人の共作になる。Mary Talbotがリサーチを、夫のBryan Talbotが描画、そしてKate Charlesworthが彩色、とのこと。

 

これが、かなり読み応えのある物になっている。Mary Talbot自身は批評理論でランカスター大学で博士号をとった研究者で、夫のBryanもいくつか賞を取っているアーティストだ。(ちなみに、ヴェロニーク・タナカ、という日系フランス人として発表した作品もある。タイトルはMetronome 。)脚注と参考文献表がついている漫画だ。

 

作品は1969年、老女となったサリーがベッドの上でまどろんでいるシーンからはじまる。ワークハウスからエメリン・パンクハーストに拾われ、メイドとなった貧しい出自のサリーが主人公。パンクハーストの活動が広がりマンチェスターからロンドンに拠点を変えるにあたって暇をだされ、メイドとして次の家へ赴く。しかし、そこで性的な嫌がらせの対象となったサリーは、仕事を追われ、ロンドンへ出て行くことになり、徐々にサフラジェットとして運動に関わって行く。

 

婦人参政権運動については多くが知られているのであえて細かくは書かないけれど、非常に面白い作品。たとえば、デモに出たサリーが警官隊とぶつかるシーンでは「いつもと警官の様子が違う!」「ウェールズの炭坑のストライキだわ!いつもの警官がそっちに出払っていて、イーストエンドのヤクザものが制服を着ている!」というような史実にのっとった描写が、臨場感と危機感をあおる。

過激化するサフラジェットの運動、パンクハーストへの幻滅、参政権を勝ち取ることを信じて共にやって来た男性との恋愛、第一次大戦。まさに壮絶としか言いようのないシーンの数々は最後に再び1969年、老女となったサリーが孫娘と語っているシーンで終わる。この手の作品でネタバレを怒る人もいないだろうから、紹介しておこう。

 

来年には選挙権が18歳へと引き下げられる、という話をしながらサリーの目は輝く。「考えても見て!来年にはあなたも投票できるのよ!」

そんな彼女に孫娘はこう答えるのだ。

"Oh, I don't think I'll bother, grandma." (そんなこと、わざわざしないと思うわ。おばあちゃん。)

 

祖母が死を覚悟して戦った権利は孫娘にとっては、「当然そこにあるもの」。それは、あまりにも悲しく、同時に頷けるエンディングだ。

 

ちなみに、日本の感覚で「漫画」のつもりで読むとちょっと足をすくわれる。おそらく日本の漫画家さんが書き直したら10巻物ぐらいになるのではないかという密度。それは文字量だけではなくて画像も。個人的にはもう少し背景もすっきりさせた方が読みやすいと思うのだけれど、むしろその密度を楽しみながら読むべきであるのかも。

 

 

 

 

Sally Heathcote

Sally Heathcote