スコットランド独立とヨークシャーと。
スコットランド独立の是非を問う選挙が間近に迫っている。
これに関してはシノドスの久保山尚氏の記事が本当に的確だし、ブレイディみかこ氏の文章もその通り、なのであまり私が付け加えることもないのだけれど、とにかく、この件に関しては日本の報道にはやはりちょっと違和感がある。
先ほどもNHKのニュースを流しながら仕事をしていたら「イギリスはスコットランドやウェールズを含む4つの地域から成り立っており」と、こともなげに言っている。
NHKにそこがわかっていないとは思えないので、日本の視聴者のわかりやすさを尊重した言葉の選び方なのだろうけれど、「地域」ではなくて「国」でしょう、そこはやはり譲ってはいけないのではないですか、と私などは反射的に思う。「地域」が「イギリス」という国を離れる、のではなく、「スコットランドという国」が「イングランドという国」との関係を解消して「ブリテン連合王国」から脱退したい、という話だからだ。
(北アイルランドあたりはかなり議論の余地もありそうだけれど、少なくともスコットランドも、ウェールズも「国」だし、北アイルランドを「地域」と呼ぶのはそれはそれで政治的な態度の表明だと思われる)。
今回の投票に至るまでに幾度もそれこそ耳にタコができるほど繰り返されたように「イングランドとスコットランドは対等のパートナー」であるのが建前になっているし、今回の件がどう転ぼうとも大きな波紋を広げざるをえないのも、まさに「対等なパートナーの片方が、本気でウェストミンスターに愛想をつかした」感があるからだ。
それは民族主義の高まり(のレトリックを借りている部分がないわけではないけれど)というよりもずっと、政治理念の分離であって、圧倒的な資金と力を持つロンドンと他の地域の関係性の問題でもある。
つまらないたとえであるけれど、やりたい放題の高収入夫に愛想を尽かした妻、というような構図で、「実家に帰らせていただきます」は別に実家というオリジンに戻りたい、というわけではなくて、「あなたに頼らなくても経済基盤はありますよ」のニュアンスが近いように見える。
どのような結果になったとしても、この後、イングランドとスコットランド、ウェールズとの関係性は変わらざるをえないし、そしてその結果はある意味とてつもなく身近な生活上の問題として表れざるをえないかもしれないな、という話もあり、選挙権のない身としては、はらはらと先を見守っている。
追記:周囲ではよく聞く「ヨークシャーだってスコットランドと同じくらい無視されているし、ロンドンには地方の事情がわかっていない」という記事がガーディアンから。今後のイギリス国内の揺れを予想させる。