Andrew Marr "Great Scots:The Writers Who Shaped a Nation"

ずっと見たかったのだが、時間を取れずにいた Andrew Marr's Great Scots をようやく見ることが出来た。

独立の賛否を決める投票の前、この夏に3回にわたって放送されたドキュメンタリー番組でスコットランド文学の著名な人物3人を取り上げている。最初からジェイムズ・ボスウェルウォルター・スコット、そしてHugh MacDiarmidの三人。

 

さて、このドキュメンタリー、決して中立ではない。明らかに独立反対の視点から構成されていて、例えば、第一回で取り上げられるボスウェルなどは、「イギリス人で」「英語とイギリス文学に大きな影響を与えた」サミュエル・ジョンソンの伝記を書くことでジョンソンの名声を不動のものとすると同時に、伝記という分野を打ち立てたスコットランド人である。ジョンソンなしでボスウェルなく、ボスウェルなくしてジョンソンなし、という二人の関係を追いながら、番組はいかにこの二国が「連合王国」であるという事実が文化的に意味を持ったかを伝える。

 

 

が、同時に。

燕麦の定義に「穀物の一種であり、イングランドでは馬を養い、スコットランドでは人を養う」と書いたジョンソンと、「それ故に、イングランドはその産する馬によって名高く、スコットランドは人材において名高い」と返したボスウェルの関係が対等だった訳ではなく、二人を取り巻く環境がいかにスコットランドにとって不利なものだったのかを番組はまた、しっかりと伝えてもいる。

 

イ ングランドは、あたかも自らがブリテン連合王国そのものであることを疑わないかのように行動し、スコットランド連合王国の構成国の一つとして、それにい らだちながらも、自らの文化を打ち立てて行くという使命を持ち続ける。

3回の番組で浮かび上がってくるのは、避けようのないイングランドとの関係性の中 で、スコットランドのナショナルアイデンティティがどのように文学によって作られて来たかだ。「独立反対」の立場から構成された番組でありながら、スコットランドのナショナルアイデンティティと誇りを明らかに見せるものにもなっている。

 

スコットランドモダニストであり、共産主義者でファシズムにも興味を持っていた詩人ヒュー・マクダーミッドを扱った3回目も、また見応えのある出来上がりだ。

 

本来はアウトなのだろうけれど、YouTubeにあげられていて、イギリス国外からも見ることが出来る。いつまでかはわからないけれど。