明くる朝 (The Morning After)

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スコットランド独立が否決された。

というわけで写真は我が家の本日の夕食。

缶詰なのが惜しいと言えば惜しいけれど、スコットランド料理のハギス、そしてお茶請けにスコットランド名物のタノックのティーケーキである。後者は「独立が達成されたらイングランドが嫌がらせで高い関税をかけるに違いない!」というジョークがネット上に散見されたくらい、スコットランドといえば真っ先に思い浮かぶ菓子である。これとマーズバーというチョコレートバーのフライがスコットランド名物だ。

ちなみに今回の騒動では「なんでスコットランド人がマーズバーのフライを食べるのに私たちが税金で助けなくちゃいけないのよ?」と失言をもらした国会議員もいてちょっとした物議を醸した。ということでマーズバーのフライにも心引かれたのだけれど、いくらなんでも自宅でチョコレートバーをあげる気にはなれなかったので、こういう品揃え。

タノックのティーケーキは実はどこでも買えるのだが、まあ、位置づけとしたら京都の生八つ橋のようなものだろうか。

 

今回の独立投票については「おめでとう」であるとか「独立しなくてよかったね」という知らせをもらったのだけれど問題は山積で、実はかならずしもお祝いをしたいと言う気分にならない。というのも「差がついた」とはいえ、あまりにも今回の選挙の結果が近かったからだ。約10%の差がついたといっても、今まで一貫してスコットランド独立支持は約3分の1前後だったはずで、よくぞ半数近くまで、という感覚が拭えない。

投票に至るまでに吐かれた暴言や感情的な選挙活動の今後に与える影響を危惧する声も。何よりも私にはこの記事の最後にあるビデオで「国の半分がこの結果を悲しんでいるのにとても祝えない」と言っているNOキャンペーンの台詞が突き刺さる。そう、彼らにとっては反対陣営も「敵」ではなく「同胞」なのだ。

 

まさに国を二分する課題と向き合っていく上でナショナルアイデンティティを保ちながら建設的なステップをとれるように文化的に注ぎ込まれた努力も無視できないものがあって、有名なところではHarry Potterの著者、J.K. ローリングが早い時点から独立反対の声明を出していた。(ちなみに、結果が出たところでもツイートをしている。)先日紹介したAndrew Marrのテレビ番組しかり。

 

そして、よく耳にしたのが、クリスティン デルカ (Christine De Luca) の 「明くる朝」The Morning After という詩。選挙の結果がでる今朝のために書かれた詩だ・(全文はこちら

 

著作権の問題もあるから、本当に一部だけざっくり訳して紹介しよう。

誰一人、落胆して目覚めることがないように。どのような結果になったとしても私たちは率直に話し合った[略]

得られる権力や権力をどう使うかの話だったかしら?私たちはより平等を、今日より平和な明日を、公正さを、機会を、公共の幸福を、助けようという意欲にあふれて伸ばされた手を目指している。

私たちを結びつけるのは国旗でもなく、戦いに疲れた縄張りでもなく、タータンでもない。そういった目に見えないもの。[後略]

 

投票権を持つ若い人たちがこの詩を朗読している動画がこちら

 

今回の選挙では16歳以上から投票権が与えられたこともあって、動画に出てくる人々の若さに目がくらくらする。そして、なんというか、まあ、スコットランド、頑張ったね、と思ったのだった。せめて今日は(特に好物ではないのだけれど)ハギスでも食べよう、と。