帽子なしでイルクリー・モアを歩く(つまりはヨークシャーの州歌のはなし)

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Evening Light on Ilkley Moor | Flickr

 

ヨークシャーの民謡に Ilkley Moor Baht'At というのがある。もう、字面を見ただけでは一体何のことだか訳が分からないと思うのだが、現代英語に直すと "Ilkley Moor But Hat"ーつまり「帽子なしでイルクリーモア」ということになる。そう、このブログ名の由来だ。

正しく歌詞を書き取るとこうなる。

Wheear 'ast tha bin sin' ah saw thee, ah saw thee?
On Ilkla Mooar baht 'at
Wheear 'ast tha bin sin' ah saw thee, ah saw thee?
Wheear 'ast tha bin sin' ah saw thee?
On Ilkla Mooar baht 'at
On Ilkla Mooar baht 'at
On Ilkla Mooar baht 'at
Tha's been a cooartin' Mary Jane
Tha's bahn' to catch thy deeath o' cowd
Then us'll ha' to bury thee
Then t'worms'll come an' eyt thee up
Then t'ducks'll come an' eyt up t'worms
Then us'll go an' eyt up t'ducks
Then us'll all ha' etten thee
That's wheear we get us ooan back

多分、普通に英語を勉強しただけでは読めない。ヨークシャーに住んで3年になろうかという私も、聞いただけでは一体なんのことやら訳が分からない。


Ilkley Moor bar t'at - YouTube

「最後にあってからどこに行ってたの?帽子なしでイルクリーモアに行ってたの?メアリー・ジェーンを口説いていたの?帽子なしでイルクリーモアに行ってたんだね?ひどい風邪をひいちゃうよ。そしたら墓に埋めなくちゃ。そしたら虫が体を食べる。鴨がその虫食べるよね。そして僕らは鴨を食べる。そしたら僕らは君を食べたことになるね。君に仕返ししたことになるね。」

 

というような歌で、まあ、生命の循環と大地の豊穣をたたえた歌、みたいな説明があるにはあるんだけれど、どう考えても、みんなのアイドル、メアリー・ジェーンを抜け駆けして口説いて落とした男に対する他の青年達のやっかみの歌、としか聞こえない。

 

かつて早稲田の校歌がそうであったように、昔はヨークシャー出身の男達がパブでであってある程度酒が入ると徒党を組んで歌いだしてもおかしくなかった歌、というとイメージがわくだろうか。1880年代からの流行だと言うことだから、そこそこの歴史になるのだろうか。イルクリーなんざ、人口1万五千人程度の小さな町なのに、なぜこの町の民謡がこれだけ知られているか、というと第一次大戦の時、この地域から集まった兵達が行進の際に歌ったからで、今ではUnofficial Yorkshire anthem (ヨークシャーの非公式州歌)のポジションにある。私たちの世代だとテレビの宣伝で使われているのを見たことがあるかもしれない。

 

非公式な割には、この歌の人気は根強い。この歌を歌える人間が減ってきているというのが、テレビのニュースになるし、一部ヨークシャーの学校では音楽の授業の一環として教え始めたとか。(ちなみに私も歌えない。メロディはシンプルなのだが、どうしてもきちんとヨークシャー発音ができない)


Ilkley Moor Baht 'At - BBC Look North news report ...

ヨークシャー出身のタレントを多く起用して観光局の肝いりで作られたヴァージョンはこちら。


Yorkshire Anthem - Ilkla Moor Baht 'At - YouTube