The Dawn of a Tomorrow『秘密の花園』の作者の大人向けノヴェラ

 

The Dawn of a To-morrow (English Edition)

The Dawn of a To-morrow (English Edition)

 

 『秘密の花園』『小公女』『小公子』といった児童向けの作品群で知られるフランセス・ホジソン・バーネットだけれど、大人向けの作品も書いている。これは1906年の大人向けの作品。とりあえず読ませる筆力とご都合主義な結末は『秘密の花園』の作者の面目躍如といったところ。いや、途中で飽きるのだが、そこにたどり着いたころには「ここまで読んだんだから何もかもが丸く収まるところが見たい!」と思ってしまうのだな。

売春や貧困が出て来てはいるものの、基本おとぎ話だ。

 

舞台はロンドン。人生に疲れきった「アントニー・ダート」と名乗る主人公は自殺を考えて深い霧の中をピストルを買いに出かける。しかし霧の中、道を誤り、スラムApple Blossom Courtの住人である少女「グラッド」と出会う。グラッドが連れて行った先で彼が出会うのは、貧しさの中お互いを支え合う女性達であり、そして彼女達に心の支えを与えているMiss Montaubynというかつてミュージックホールのダンサーだった女性だった。彼らと話しているうちに、「アントニー・ダート」の心に変化が起きる・・・

 

数ページ読めば、大団円で終わるというのは予測がつく。とりあえず先を読みたくなるのはバーネットの手腕だろう。

バーネットの女の子の描き方は私はあまり嫌いではない。始終uglyと評されるグラッド(グラディス、がフルネームだが、「嬉しい」グラッド、と呼ばれている)は、平然と「もっと大きくなったら多分街角で娼婦をすることになると思う」と言うようなことを口にするし、にもかかわらず、決定的に「善い力」として描かれている。

 

とはいえ作品を読みながらさすがに意識が飛びそうになった箇所もある。特に後半舞台がグラッドの住むApple Blossom Courtに移りMiss Montaubynが延々と自分のキリスト教信仰を語り始めると、よほどそういうシーンに耐性がある人でないとしんどいのではないかと思う。

『秘密の花園』でも、ものを知らない人間(子供であるとか、無教養なスラムの人間であるとか)が直感的に最も正しいキリスト教信仰にいたる、というある意味「高貴なる野蛮人」主題の変奏が描かれていたが、こちらではそれがあまりにも表に出過ぎていて鼻につく。

 

『秘密の花園』を読んだときにも感じたのだが、自己啓発本のような匂いが強い。ポジティブな心持ちでいると、幸福がやがてやってくる、という主題。裏は取っていないのだけれど、1902年に出版され、自己啓発本としては多大な影響を残したジェームズ・アレンのAs a Man Thinketh  (邦題は 『「原因」と「結果」の法則』 )との関連をちょっと疑わせる。

 

 

As A Man Thinketh 『「原因」と「結果」の法則』を現代英語で読む

As A Man Thinketh 『「原因」と「結果」の法則』を現代英語で読む

  • 作者: ジェームズ・アレン,船津洋
  • 出版社/メーカー: 総合法令出版
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「原因」と「結果」の法則

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As a Man Thinketh (English Edition)

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《愛蔵版》図解 本当の幸せをよぶ「心の法則」

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