不法移民・クマのパディントン

 

 

くまのパディントン - A Bear Called Paddington 【講談社英語文庫】

くまのパディントン - A Bear Called Paddington 【講談社英語文庫】

 

 映画、 Paddingtonを見て来た。11月の末に公開だったから、ようやく、という感じだ。とはいえ、周囲の評判通り、良い映画だった。

実は私は原作を読んだことがない。子供の頃に名前を知っていて読みたいのに図書館になかった本が何冊かあるのだけれど、パディントンはその一冊になる。

 

ペルーからやって来るクマのパディントンは、この映画の中では徹底して移民として描かれている。悪いことをするつもりもなく、単純にロンドンを新天地と信じてやって来る移民として。そもそも彼は「呼ばれた」のだ。イギリス人探検家に「ロンドンに着いたら歓迎する」と。

どう見てもユダヤ系のようで東欧からやってきたように見える骨董屋も「ロンドンに居場所を見つけた移民」のモチーフをつなげて行く。

映画の中で何度も登場するカリプソ・バンドは非常に良いチョイスで、1948年のウィンドラッシュ号に乗ってやってきた移民達を思い起こさせる。(作者自身も言っているようにパディントン疎開児童のように札をつけて駅に到着するので、時代的になんとなくしっくりくるのだ)

 

Brown一家に入り込んだクマは(その名字からパディントンがこの一家にとけ込むことは最初から示されている・・・なにせ「茶色い」一家だ。クマにぴったりではないか)紆余曲折を経てロンドンの一員になる。「誰もが違う」ロンドンにはクマの居場所もあるのだ・・・。

 

とてもポジティブなメッセージ。スチームパンク調の博物館等の描写も楽しい。随所に埋め込まれたダジャレに思わず笑う。

けれども、現実のイギリスの移民政策に翻弄されている身とすると、この映画を見ていて、複雑な気持ちになるのも事実だ。

現実の「パディントンたち」がイギリス社会にとけ込むまでの紆余曲折はこんな物ではないよなあ、と。

複雑な気分で家に帰ったら、やはり「不法移民としてのパディントン」に関する記事が出ていた。パディントンがもしも現実にいたとしたら、一体どのような扱いを受けることになるかをリストする記事だ。

かなり大変な目に遭うことは確かなのだけれど、もちろん、苦労をすることになるのはパディントンだけではない。

Incidentally, for offering a home to Paddington — or harbouring him, as the Home Office would have it — Mr and Mrs Brown could potentially face prosecution under section 25 of the Immigration Act 1971, entitled “Assisting unlawful immigration to member State”. The maximum sentence is 14 years.

これがもしも現実であったとしたらパディントンに家を提供することによって、ブラウン夫妻は最長で14年の禁固刑を言い渡される可能性がある、と。

 

それでも「移民にも居場所があるロンドン」の物語が映画として作られているのはとても良いことなのだろうと思う。

 

たぶん。

 


Paddington – Official International Trailer - YouTube

 

くまのパディントン―パディントンの本〈1〉 (福音館文庫 物語)

くまのパディントン―パディントンの本〈1〉 (福音館文庫 物語)