In the Closed Room 『閉め切られた部屋で』

 

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Ringlet Girl & Doll 1 | Flickr

 

In the Closed Roomは『秘密の花園』を書いたフランセス・ホジソン・バーネットのノヴェラである。幽霊譚。

 

ワーキングクラスで仲の良い両親と共にコニーアイランドの狭いアパートに暮らしている7歳のジュディはある夏、家族でお金持ちの家の留守番としてお屋敷に家族だけで暮らすことになる。広い家には一部屋だけ閉め切られた部屋があったが、なぜか、ジュディだけは鍵がかけられたその部屋へ入ることができるのだった。そこは打ち捨てられた子供部屋だった。閉じきられている筈の子供部屋で、ジュディは不思議な少女と友達になる・・・

 

結末が結末なだけに微妙に後味の悪い話である。これは子供向けに書かれたのだと思うのだが、これを子供が読んだら、結構恐ろしいのではないだろうか。少なくとも私が10歳ぐらいの時にこれを読んでしまったら絶対に夜眠れなかっただろう。大人になった今だからこそ、読んでもpredictableだと思う訳だけれど。

ジュディの叔母ヘスターがジュディに似ていて若くして不思議ななくなり方をした、であるとか、ジュディはどちらかといえば内向的で叔母と会うことができるような気がしていた、であるとか、最初から幽霊譚へと向かう気まんまんのストーリーライン。

結末が見えているストーリーとはいえ、バーネットはやはり「読ませる」書き手でもあって、夏の暑さや、電車の音のうるささ、人のいなくなった屋敷の静けさなど、上手に舞台を設定して行く。主人公が「ちょっと変わった少女」であるところもこの作者らしい。初版は1904年。ヘンリー・ジェイムズの幽霊譚『ねじの回転』の6年後だ。

惜しむらくはクライマックスに向かう屋敷の持ち主の帰宅のあたりで会話が突然説明調になってしまうこと。 微妙に薄気味悪い物語であるのに、その薄気味悪さに作者本人が耐えられなかったのではないか、と思わせるようなかたちで毒抜きがされている感じ。

 

 

In The Closed Room (illustrated) (English Edition)

In The Closed Room (illustrated) (English Edition)