イギリスの母の日は3月にある(そしてそれはもうすぐだ)

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Mothering Sunday. | Flickr - Photo Sharing!

 

 

イギリスの母の日は5月ではなく3月だ。母の日のカードも、当然この時期に売り出される。

この日には親鳥とひな鳥のモチーフのカードが贈られたり、シムネル・ケーキと呼ばれるケーキを食べたり、といったお祝いもする。イースター前の、だんだん日が長くなってくるこの時期の、ささやかに楽しみな日。

 

身を慎むことが求められる四旬節に疲れてくるような第四日曜日で、実はキリスト教の祝日でもある。

この日は、伝統的には母教会へ帰省し、母親の顔を見る、ということで、昔の家事使用人も帰宅が許されたと言う。イースター前のとても貴重な休日だったのではないかと思う。

 

四旬節の間は、かつては結婚式を挙げることができなかったのだが、この日だけは特別で、地域によっては挙式が許されたという。婚外子に厳しかった過去のイギリスでは、46日間の結婚禁止の厳しさに「やばい!」と真っ青になったカップルがこの日に挙式をするようなこともあったのだろうな、と思いを馳せてしまう。

だから、イギリス人と話していると「アメリカの母の日とは違って、こっちには古い歴史があるんだよ!」と時折鼻高々に教えられる。

そして、毎年、この時期には新聞の投書欄に「イギリスの母の日はMother's Dayではなく、Mothering Sundayだ!」との指摘が載る。

 

 

 

が。

しかし。

現在のような形でMothering Sundayが祝われるようになったのは実は結構最近だ。(←このパターンは多すぎてちょっと悲しいのだけれど)

 

実際には現在のような形のMothering Sundayは、熱心な英国国教会徒(それも、ハイチャーチ)だったConstance Penswick Smithの20世紀初頭の活動で形作られたものだ。そして彼女のインスピレーションのもとは、アメリカの母の日運動だった。

 

ペンズウィック・スミスが母の日運動を思いついたのが1913年というのはおそらくとても重要で、Mothering Sundayは若い男性達がどんどん殺されて行く第一次大戦とその後に急速に一般化して行く。このあたりはおそらくCordelia Moyseの著作に詳しい(はず)。息子達を失った母達の思いが、イギリスの現在の形での母の日の普及の背景にあったのだと思うと、本当に切ない。

 

ま、それはともかく、日本のお母さん達はこの日曜日にむけて「イギリスでは今週末に母の日があるのよ!」アピールをすると良いと思う。そして、5月にももちろん、母の日アピールをするということで。

A History of the Mothers' Union: Women, Anglicanism and Globalisation, 1876-2008 (Studies in Modern British Religious History)

A History of the Mothers' Union: Women, Anglicanism and Globalisation, 1876-2008 (Studies in Modern British Religious History)