小学校の制服の話
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イギリスの公立小学校は基本的に制服がある。といっても学校ごとにデザインが決まっているわけではなく、色と形が指定されているのだ。
「男子。赤のポロシャツ、グレーのスエットシャツ。黒のズボンないしは半ズボン、グレーの靴下。女子、赤のギンガムチェックのワンピース、赤のポロシャツ、グレーのズボンないしはスカートやワンピース、グレーのカーディガン。」といったような調子で。
親はそれをもとに予算に応じてスーパーや、デパート、制服専門店などで子供にあった服を買う。大概の小学校はお古の制服を格安販売するシステムをPTA主導で持っているので子供が小さくてすぐに服がきつくなる低学年の時期はそれを利用することも出来る。
別に決まったデザインがあるわけではないので、よく見ると女の子のワンピースなど微妙にチェックの大きさが違ったり、ウエストの切り替え位置が違ったり、襟のワンポイントの飾りが違ったりする。けれど、全員そろうと見事に統一されているし、個々の子供達の好みにも何となく合っている。女の子はリボンや髪のゴムさえ、学校の色で統一していて本当に可愛い。シャツがポロシャツなのも小学生にはとても良い。
近くの地域の学校は色がかぶらないようにしてあるので、遠くから見てもどの学校の子なのかすぐわかる。
これは結構良いシステムだと私は思っている。
何よりも、親にとってありがたいのは、朝の忙しい時間に「この服はやだ」「何着れば良いの?」というごたごたがないこと。みんなが同じものを買うので必然的に制服は値段の割には質が良く、洗いもきくし、乾きも早い。着心地も良いらしく、学校から帰って来てもみんな制服のまま遊んでいる。我が家の子供達にとって、私服とは、週末と学校の休みの間に着るものだ。
不思議なのはこれだけ緩やかに見えるのに、どこかの店がどうみてもおかしい服を売り出したりしないこと。規範がどこにあるのかはわからないけれど、どれも、きちんと制服としておかしくない。変な話だけれど、日本だったらどこかの企業が裾にレースたっぷりのヴァージョンや、アニメのキャラクターがワンポイントのヴァージョンなど売り出しそうだよな、と思うのだ。
制服の規範については、そういうわけで、面白いなと思ってみていたのだけれど、イギリス北部に暮らして三年目の最近、初めてその規範の強さにちょっとびっくりしたのが先日。
ヨークシャーのこの地域はエスニックグループによる棲み分けが激しい。
だから、町を歩いていると自分がエスニックマイノリティであることをひしひしと感じることになるのだが、電車で来ることが出来るこの町には定期的によその町の小学校が遠足にやってくる。それは、つまり、白人が9割を超えるこの町で、普段は目にしない服装や行動を目にする、という意味でもある。
その日、公園を歩いていたのはパキスタン系の子供達が集まっている小学校の子供達だった。目を引いたのは女の子達で、こぞって、ワンピースの下にグレーの制服ズボンをはいていたのだった。
足を出した格好をさせたくなかったのだろうな、ということは容易に想像がつく。しかし、ズボンだけというのも、おそらくだめなののだろう。それにしても、共布、あるいはにたような色でズボンを作ってサルワカミーズにしてきちんとデザインしたものを誰かが売り出しそうなものなのに、確かに考えてみれば、普通のスーパーにはーーオンラインストアにもーーサルワカミーズ制服などというものはないのだ。
イギリスの公立校におけるイスラムの服装は、2004年のシャビーナ・ベガムの件からもわかるように議論があるところだけれど、不思議な気分になってしまう一件ではあった。