カスタードの秘密
Great British Brands - Bird's Custard | Flickr - Photo Sharing!
カスタードの作り方は小学生ぐらいの頃に教わった気がする。
卵黄、ミルク、砂糖をゆっくりと練り上げて作る。
しかし、イギリスで「カスタード」といえば、卵を使わずコーンスターチ(こちら流にいえばコーンフラワー)と砂糖、香料、着色料を練り上げたものだ。
初めてイギリスに来て供された「カスタード」なるものが、全く卵の味のしない代物であることにはかなりびっくりしたし、「・・・これが噂に聞くイギリスの変な料理か?!」と妙な納得をしもした。
もっとも、昔からずっとイギリスのカスタードがこうだったわけではなく、この国の「カスタード」がこういうものになったのは大体1840年代以降だ。なぜなら、これは一つの企業の売り出した「カスタードパウダー」がもとで起きた変化だから。
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今でもイギリスのスーパーでは良く見かけるこれ。アルフレッド・バードのカスタードだ。
薬屋でもあったアルフレッドの妻はイーストと卵アレルギーに悩まされていた。
ということで、妻のために彼が製造したのが「卵なしカスタードパウダー」。今でもイギリスのカスタードと言えば定番のこれだ。今でも100%に近いブランド認知がされている。これが売り出されたのが1837年。軽くて日持ちがするこのカスタードは第一次大戦中英国の兵士達に配給もされている。
ちなみに、イーストアレルギーでパンが食べられなかった妻のために1843年にはベーキングパウダーも発明している。
バードカスタードは正直言って私にはあまり美味しいものだとは思えないのだけれど、多くのイギリス人にとっては子供の頃の記憶と密接に結びついた「懐かしい」味だ。本物のカスタードなど作った日には「美味しいけど・・・これ、カスタードじゃないよね?」と言われることを覚悟するべし。
そして、「うん。これがカスタードが食べられない妻のために夫が売り出したものなんだな」と思いを馳せながら食べるのが吉ではないか、と最近は思い始めている。