筆記体の話

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(↑書こうとしても、もう日本で習った筆記体を書くのはしんどい・・・)

 

日本に住む中学生の甥から「筆記体を勉強したいかどうか選べるんだけど、そうすればいい?」という質問を受けた。

 

勉強するかしないかは本人が選ぶべきだと思うので、ちょっと答えに窮した後、「じゃあ、私が知っていることを説明するから自分で選んだらどうだろう?」と返事をする。

 

「もう、英語圏筆記体なんか使う人はほとんどいないんでしょ?」という質問も、同時期に他の子供からされて「うーん、それも厳密に言うと、ちょっと違うんだよな」と思ったりなんぞしたので、その辺りも少し。

結論から言うと、文字の間がつながった広義での「筆記体」は今でもイギリスでは教えられているし、書く人もたくさんいる。ただし、その「筆記体」が日本で英語を習うときに教わるあの「筆記体」かというと、そうではない、のだ。

 

多くの日本の人たちは「英語にはブロック体と筆記体という二つの文字の書き方がある」と考えているように思われるけれど、厳密にいうと、それは違う。

アメリカ英語でcursiveと呼ばれ、イギリス英語でjoined-up writingと呼ばれる筆記体には、もちろんいくつもの方式があるし、国による違いも大きい。

つまり、日本で筆記体を習っても、英語圏の国に行った時、そこの人々が書く手書き文字が楽に読めるか、というとそうでもない、ということだ。

大人になった今見てみるとアメリカで開発されたD'Nealian方式が私が習った筆記体に近いな、と思う。そしてそれは我が家の子供がこちらの学校に通い始めた頃に教えられた筆記体とはかなり違う。

初めてイギリスに留学した時には周囲の人の手書き文字が判読できずにひどく苦労した。さすがに結婚して10年も経つ今となっては夫のメモも読めるけれど、昔は手紙をもらっても読めなかったし、「これ買ってきてくれる?」と渡されたショッピングリストをいちいち読み返して確認する必要もあった。

 

大人が子供に「勉強しても意味はないよ」と伝えることはできるだけ避けたいし、第一本当に意味がなかったのかはわからない。

イギリスに行って手書き文字の判別に苦労したのは事実だけれど、アメリカ式の筆記体を習っていなかったらもっともっと苦労したのかもしれない。

とはいえ、習ってもそのまますぐに日本以外の国の人が書く手書きの英語が読めるようにはならないと思うよ、とは伝えておく。

 

・・・数分もしないうちに「ブロック体にする」と、返事が来たのだけれど。