家事指南本

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家事の本は、ダイエット本とならんで、手を伸ばしてしまうジャンルだ。

別にそれで何かを変えようとするのではなく、お話を読むように読んでいるので、我が家自体はしっちゃかめっちゃかなままなのだが、そもそも家事をしたいのであれば本を読むより実際に体を動かすほうが早いので、私にとっての家事指南本は実用書(と銘打ってはあるものの!)というよりは「おとぎばなし」であるとか「娯楽」であるように思われる。

 

 

家事の本が面白いのは、その国の、その時代の生活の仕方が如実に表れるからで、例えばイギリスの現代の洗濯物指南に書いてあることはこんな感じ。

「外に洗濯物を干したほうが環境には良い。上半身に着るものは逆さまに。下半身に着るものはそのまま、干します。」

言われてみると周囲の家のシャツも、Tシャツも、皆逆さまに干してあるのだった。

日本だったらワイシャツなどハンガーにかけて干す、と教わったように思うのだけれど、こちらだと、とにかく風を受けるように干すというのがスタンダードの模様。日の光がいつもあてにならない国であるだけに、日光で干す、というよりは風で干すのだろう。

これが1949年出版のものだと、干し方そのものがまったく言及されていなくて、そのかわりどの衣類を煮沸洗濯するべきか、に紙幅が割かれている。

 

「アイロンをかけるのに時間がかかります」という悩みに、日本の家事本は「洗濯物を干す前に一度たたんでみましょう。生地自体のおもさでシワが自然にのびますから、干した後のアイロンがけが楽になります」と答えていたように思うのだが、こちらでは「まずは乾燥機の設定を確認しましょう。乾かしきってしまってからのアイロンは大変です」

 

時代や国によって家事の仕方は色々と変わるので、何冊読んでも飽きないところも良い。イギリスの男性向け家事指南には「暖炉の掃除の仕方」が入っていたりするのだった。

 

Household Management for Men

Household Management for Men

 

 

時々折に触れて開くKay Smallshawの How to Run Your Home without Help も、そういう意味では面白い本だ。1949年に出版された本で、ここでのhelpとはもちろん「使用人」という意味。『

使用人なしで家を切り盛りする本』・・・時代を感じるタイトルだ。

序文でChristina Hardymentが、いくつか面白い指摘をしている。

その一つが第二次大戦後の40年代後半からがミドルクラスの女性にとっては、極めて難しい時代だった、ということだ。それまでは使用人をどうやって使うか、が主婦の知恵だった中流家庭の女性が、男性の収入減と使用人不足で、自ら家事をしなくてはならなくなったのがこの時代で、彼女たちが直面した困難は特殊なものだったと。

「メイドと女主人」という二つの仕事をすることを突然求められたのに、家事に対する経験値はすこぶる低い・・・・それは大変だ。

 

Hardymentはまた、この本で与えられている指南と、それ以前の使用人に対する教育とのオーヴァーラップを指摘している。

第二次大戦以降の大幅な主婦人口の増加によって、それまでは使用人の仕事として労働者階級の女性達に求められていた知識が、中流以上の女性達に求められるようになっていったのだ。

その大きな流れの端っこで、私は家事指南本を読む。食器洗い機が食器を洗い、洗濯機が洗濯をし、上の部屋ではルンバが掃除機をかけてくれている間に。

 

How to Run Your Home without Help

How to Run Your Home without Help