サンタのプレゼントは靴下に入っている(そして私はそれが好きだ)
For My Expensive Little Things | Flickr - Photo Sharing!
サンタのプレゼントはイギリスではしばしば靴下に入れられる。
「へえ、そんなの当然じゃない?」と思うかもしれないけれど、そんなことはなくて、たとえばアメリカや日本では「サンタさんのプレゼント」として贈られるかもしれないような高価なおもちゃの類いは基本的にはイギリスのサンタさんの靴下には入らない。
そういうものは大人がー親であるとか祖父母であるとか、顔の見える人間ーが買ってあげるもので、クリスマスが終わったら子供達にはお礼の手紙書きがちゃんと仕事として待っている。
そういった大物のおもちゃではなくて、サンタさんが持ってくるのは、お昼から始まるクリスマスディナーの準備をしている親を、子供が邪魔しないで遊んでくれるような小さなおもちゃとお菓子だ。Stocking fillers (靴下用のプレゼント)という専用の言葉があるし、この時期商店が大々的に売り出すから、これは私と私の周囲の家庭だけではないと思う。
靴下は専用のものが今では一般的になっているけれど、ストッキングフィラーは、普通に靴下に入るぐらいの大きさの物が普通だ。
実際に数年前まで我が家はきれいに洗濯した山歩き用の靴下を使っていた。上の子は「どの靴下が一番大きいかな」と頭を悩ませて選んだものだ。
塗り絵と色鉛筆。
ジョークが詰まった小さな本。
トランプ。
ビー玉。
簡単なジグソーパズル。
上に腰掛けるとおならの音がするブーブークッション。
小さな紙の箱に入った干しぶどう。
風船。
金貨の形をしたチョコレート。
そして、定番は Satsuma!(←イギリス英語でみかんのこと。本当に薩摩から輸入されたのかしら)
どれもが100均でそろうような物とはいえ、小さい分、色々取り合わせなくてはならないし、準備する方もちょっと気を抜くと結構な金額になるので色々と頭を使う。
でも、これをしっかりやっておくとクリスマスの朝の「ねー、プレゼント開けていい?!」がずっとかわしやすくなる。
そう、クリスマスのプレゼントは基本的に親戚一同そろってご飯を食べてから開けるものだし、子供にとってその数時間は生殺しに近い。
私は、イギリスのこの二段構えのプレゼント方式がとても好きだ。
理由は3つある。
「ねーねー、新しいゲーム買って!」「ダメです」みたいなやりとりに、サンタさんが巻き込まれないこと。何しろ、サンタさんは勝手に靴下用のプレゼントを持ってくるから交渉範囲外だ。
それは同時に、「本当はサンタさんいないんじゃ・・・?」という疑問がわいても、親がしらばっくれることができるということでもある。土地柄もあるのだろうけれど実際周囲の子供達がサンタさんを(留保つきで)信じている時間は結構長い。「中学に上がる前にはうちあけないとね・・・」と母親達が話したりするくらいの長さ。
そして最後に、「どんなに貧しい家庭の子にもなんとか親が工面すればあげられそうな値段のものをサンタさんが持ってくる」こと。
サンタは「いい子に」プレゼントを持ってくる。そういうサンタのプレゼントがどんな子供でももらえる値段のものだというのは、私はとても良いことだな、と思うのだ。
親の失業や離婚、そしてひどい場合には虐待も、なんとか乗り切って行かなくてはならない子供達はいる。そして、そうした子供達にも「みんなと同じ程度のもの」が、(だれか一人でも周囲に気にかけている大人がいる限り)少なくともサンタさんからは贈られる、というのは、やはりやり方としては私は好き。
去年のクリスマス、教会の子供用礼拝には色々な家庭の子供達がプレゼントを綺麗に包んで持って来た。リボンをかけた包みには対象になる子供の年齢と性別が書いてある。難民としてやって来て、親にそんなお金も余裕もない子供達に、教会からそのプレゼントは贈られる。
「サンタさん」という魔法の存在がプレゼントをくれるだけでなく、自分も贈る側に立つこと、そのために貯めて来たお小遣いを握りしめてチャリティーショップにいくこと。自分のもらうプレゼントも、「サンタさん」と「人間」の両方から来ていること、そんなことを前提としているのが二段構えのプレゼントだ。
クリスマスは、子供達にとって、プレゼントをもらうだけでなくて贈ることを学ぶ季節でもある。