パンにつけて食べるもの
イギリスに住んでいると当然のようにパンを食べる機会が増える。そしてパンは美味しい。
日本の惣菜パンには惣菜パンなりの美味しさがあるけれど、そうではなくて、もうパンそのものの美味しさ。
日本人だったらわかる、白いご飯の美味しさとも通じているかもしれない。
で、当然ながらパンにつけるものも数多くある。その中でもおそらくあまり日本人に馴染みがないのがこの2つだろう。
マーマイトとジェントルマンズレリッシュ。
マーマイトはいい。
知名度だけはやたら高い。それに日本人がこぞって「美味しくない」という。
で、これはすごく奇妙なことだと私は常々思っている。
基本発酵食品なので、味噌や醤油に通じたしょっぱみと味の深みがあり、あまり日本人が嫌いになるような食べ物には見えないからだ。イーストの独特の匂いはあるけれど……。
と、思っていた10年ほど前、帰国中に日本の人がマーマイトを塗る様子を見てひどく納得した。
ピーナッツバターのようにべっとりとトーストの上に塗っていたのだ。
在英日本人の間ではよく言われるけれど、基本マーマイトは「わさびを塗るように」塗ると間違いが少ない。寿司や刺し身にべっとりとわさびを載せる人が少ないように、トーストにマーマイトを載せるときもたっぷりバターを載せてからこころもち、添える程度でいい。
もう一つ。おそらく日本の人はあまり食べたことが無かろうと思われて、なおかつ日本人は意外と好きなんではないかと思うのがこれ。
小さなイワシのペーストなのだが、基本、塩辛系の味だ。
なんとなーくビクトリアンなケースを開けると中に入っているのは灰色のかなり魚臭いペースト。一瞬怯むけれど、珍味系の味が好きな日本人ならこれ、嫌いじゃないはず。ネギやしょうがと合わせて、なんか酒のつまみができそうな味の構成ではある。
そして、これを伝統的にはバターたっぷりのトーストに、これもまた「わさびのように」かるーく塗るのだ。
美味しい。と、私は思う。