The Bloomsbury Cookbook

 

The Bloomsbury Cookbook: Recipes for Life, Love and Art

The Bloomsbury Cookbook: Recipes for Life, Love and Art

 

 研究書ではない。普通の料理本ともちょっと違う。かならずしもレシピ通りに作って美味しい物が出来るとは限らないし、料理のレシピはそもそもかなり時代と国に左右されるから、バターや生クリームをふんだんに使ったこの時代の料理をそのまま作りたいという要請も現在のイギリスには(そしておそらく日本にも)あまりないだろう。けれども、妙に魅力的な本。

ブルームズベリーグループゆかりの人々の食べた物をたどる本としかよべないのだけれど、それがふんだんな図や写真とともに提示されているので見ているだけで楽しい。

通して読むよりも、キッチンの隅にでもおいておいて、時間が空いたときに数ページずつ読んでみるので十分楽しいのではないかという本。

出来る限りはブルームズベリーグループ構成者本人達、あるいはブルームズベリーグループが雇っていた人々のレシピを集めているとは言っているものの、必ずしも、本人達のレシピだけが入っている訳ではない。たとえば「スティーブン一家のバースデーケーキ」はビートン夫人のケーキのレシピだ。けれど、まあ、確かにこの辺りは食べていそうかな、と言うようなレシピが並ぶ。

著者はほとんど全てのレシピを一度は作ってみた、ということで、とりあえず作ることは出来るはず。

 

ウルフが生きた時代は家事、特に料理が「召使いの仕事」から中産階級の普通の人々がしてもおかしくない行為へ変わって行く時期でもあるし、途中に戦争、配給も入る。南仏の料理への憧れにポスト印象派との関係性を見ても良いし、E.M.Forsterのカレーレシピに『インドへの道 』を思い出してもいい。楽しめそう。

 

私はこの本を読むまでドーラ・キャリントンが非常に料理好きだったことを知らなかった。彼女のカウスリップワインは評判がすこぶる良かったそうで、酒好きとしては食指が動くのだけれど、残念ながら現在はカウスリップは保護対象種。古いレシピが必ずしも使えない、というのはそう言うことでもあるのだな。

 

ちなみに著者は『イギリス人の患者 』マイケル・オンダーチェの姪にあたる。