最初に英語で本を書いた女性ーノリッチのジュリアン

 

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"Statue of Dame Julian" by Poliphilo - Own work. Licensed under CC0 via Wikimedia Commons.

 

 

ノリッチのジュリアン(Julian of Norwich) という女性がいる。チョーサーの同時代人で、おそらく英語で本を書いたイギリスで最初の女性である。 "All shall be well, and all shall be well, and all manner of things shall be well"というあまりにも有名な台詞を何度も耳にしたことがあった割に、実は最近機会があって数カ所から聞かされるまで私は彼女の人生を全然知らなかった。

 

30歳でanchoriteとなる。Anchoriteと辞書で引くと「隠者」のような訳が出てくるのだけれど、そういった語から想像されるのとはちょっと違うーなぜなら彼らは(しばしば教会の片隅、しばしば半地下の)一カ所に閉じ込められて余生を過ごすことを決意した人々だから。

ちょっと大きめの墓に生きながらにして閉じ込められたような人生を想像するとわかりやすいかも。生と死の境にいるような、生きながらにして神のことを考え、祈る以外のすべてを捨てた生き方、ということだ。この辺りは私は中世が専門ではないのでおおざっぱな理解にしかなり得ないのだけれど、おそらく当時にはそれなりにあった、それでいてかなり極端な決断のように思われる。

とにかくノリッチのジュリアンは大病を生き延びた後30歳にしてノリッチの教会の一角に閉じ込められて余生を過ごすことを決め、その後40年をそこで暮らすことになる。独房のような小さな部屋には三つの窓。聖餐を受けるための窓。食事や排泄物を出し入れするための窓。そして、最後の窓は通りに面していて、そこから彼女は悩む人々に助言を与え続けたという。

 

なぜそんな話になったのか、というとそもそも隣町Skiptonの教会に、じつはAnchorite cellがある、という話から。来週にでも行ってみたいなと思っているところ。